いつも現代農業WEBをご覧いただき、ありがとうございます。
現代農業WEBチームのたじはるです。
現代農業2023年11月号の特集は、「レモンとユズと香酸カンキツ」です。
少し肌寒くなってきた9月某日、現代農業11月号で紹介されている「飛ぶように売れる!低樹高で香り強いカボスがゴロゴロ」の著者の松原忠雄さん(大分県)より、カボスが届きました。
松原さんのカボスは大玉で香りも強く、とても美しい!地元の直売所でも大人気だそうです。
このカボスについて現代農業WEBチームで話していたら、搾ってかける時の「切り口が上か下か」が話題になりました。
え? レモンでもスダチでも、ふつう切り口を下に果汁を搾るものじゃないの?(ちなみに私は関東出身)
なんと、過去に掲載された『季刊地域』2012年夏号(No.10)の大分県の記事によると、産地では、切り口を上に搾るとあります。
しかし、実際に比べてみたという話は聞いたことがなかったので、実験してみることにしました。
今回は、どっちの搾り方がより香りを楽しめるのか、現代農業編集部に抜き打ちアンケートをしてみることにしました。
産地では、切り口を上にしていた
カボスの大産地の大分県を取材した先輩によると、切り口を上にして搾るのが「通」なのだそう。
そうはいっても、本当に香りまで変わるの???
生まれも育ちも関東で、切り口を下にして搾る家庭で育った私はにわかに信じられません。
内心「どちらもたいして変わらないのでは?」と思っています。
この説を検証するため、優秀な嗅覚をもつ(はずの)現代農業編集部に抜き打ちアンケートを実施しました。
準備
カンキツ産地ではメジャーな方法です。
カボスを切る際、真っ二つに切り分けるのではなく、途中で刃を止め、切込みをいれる感じです。
農家によると、カボスの香りは果汁よりも皮に多く含まれているとのこと。
果汁が果皮の断面を伝って滴ることで、香りがよく移るのだそうです。
対して、切り口(果肉の断面)を下に向けて搾る方法です。
カボスを搾りやすい大きさに切り、力の限り搾ります。
搾りました。
Aが切り口を上にして搾ったもの、Bが切り口を下にして搾ったものです。
果汁の色や量に大きな違いはありません。
それでは検証開始
調査を開始すると、松原さんのカボスの香りがフロア全体に広がり、なんだか気持ちもリラックス。そんな爽やかな香りに誘われて、わらわらと編集部員が集まってきました。
なにやら違いがわかったようです。さすがは全国の農産物を愛する男たち、嗅覚も冴えわたっていますね。
結果発表
A(切り口を上)の圧勝と思われたところ、おや…?
集計結果には興味深い感想が。
A(切り口を上)・・・11票
(感想)
甘い香り、香りが濃い(強い)、清涼飲料水のよう、そのまま飲みたいような甘さ、フルーティ、甘いお菓子を作るときに良さそう、グレープフルーツみたい、クセがない、さわやか、果汁100%ジュースのよう、果汁感がある、そのまま飲みたい
B(切り口を下)・・・4票
(感想)
酸味が強い、香りが薄い、すっきり、お酒と割りたい、魚料理に合いそう、調味料として使いやすそう、どんな料理にも合いそう
票の数だけで見ると、A(切り口を上)の勝利ですが、感想を見ていくと、一概に優劣をつけられそうにありません。
A(切り口を上)は甘みや果実感があり、Bよりも若干香りを強く感じました。香りと甘味を楽しみたいときや、お菓子作りに向いてそうです。
B(切り口を下)は酸味が強くスッキリとした香り。上品な香りで、どんな料理やお酒にも合いそう。
ということは、もともと正しい搾り方はなく、「用途によって搾り方をかえる」が正解なのでは……。
webチームの判定は……「引き分け!」
まとめると、カボスの果実感や甘さを強く感じたいときは切り口を上に、料理やお酒と組み合わせて香りを楽しみたいときは切り口を下にする。つまり、用途によってつかいわけるべし!
まとめ
いかがでしたか?
カボスの搾り方問題は、ここにこの度解決されました。
ところで、産地で教えてもらったこの搾り方(写真)は、香りをよくするだけでなく、搾ったあと丸ごと冷蔵庫で保存しやすいという利点もありました。また、真っ二つに切らずに途中で留めておくことで、タネが飛び出しにくいのもいいですね。
現代農業11月号では、レモンの皮を使ったユズコショウならぬ「レモンコショウ」や、昆布と鰹節をあわせたポン酢など、農家直伝のレシピを多数紹介しています。
ぜひ皆さんも、美味しいユズやレモン、香酸カンキツをふんだんにつかって、食卓で秋をおたのしみください。
今回ご紹介した、「カボス」の関連記事は、ルーラル電子図書館でご覧いただけます。
農家が教える ゆずづくし
農文協 編
手作りゆずこしょうのコツ、ゆずシフォンケーキなどのスイーツレシピ、皮や果汁の手軽な保存術、ゆずタネ化粧水など暮らしへの活用、庭先や鉢での育て方など、ゆずの活用法をまるごと紹介。