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イナワラでツリーに飾るオーナメントを作ろう

山形県・高橋伸一

現代農業2017年12月号「農家のクリスマス飾り」特集のなかから、この時期にピッタリなイナワラ細工の記事を公開します。

イナワラのオーナメント

手仕事の技を現代に取り入れる

 山形県真室川町に暮らし、古くからの手仕事の技を今の暮らしに取り入れるべく、冬は「工房ストロー」としてイナワラ細工を手掛けています。

 もともとわが家は米と200種ほどの豆や野菜を育て、数頭の繁殖牛を飼ってきた専業農家で私は5代目です。高校卒業後、町役場の職員として20年以上勤めながら、地域活性化や地域ブランドの立ち上げに関わる中で、失われつつある地域の宝に気づき、それを受け継ぐべく一念発起し、2年前に退職し、家業の農業を継ぎました。

 数々の手仕事の中でも最も身近なものはイナワラ細工です。戦前までは農村の暮らしの隅々まで活用されていたといいます。イナワラは毎年、膨大な量が手に入る身近な素材ですから、先人も衣食住にフル活用したのでしょう。しかし、数千年ともいわれる稲作の歴史と共に発展したイナワラの加工術も、ここ数十年の間にすっかり失われようとしています。そんな時代に生きる者として、その継承に使命感を感じつつ、地域の古老を訪ね、作れるものが一つ一つ増えるたびに喜びを感じています。

イナワラ細工はフェアで大人気

昔から身近な素材として活用されてきたイナワラ。オーナメント作りでイナワラを今の暮らしに取り入れる(写真はすべて高木あつ子撮影)

 今、各地で大賑わいなのがクラフトフェアです。作り手が自らの作品を製作の物語と共に、直接お客様に届ける素敵なイベントです。大量生産大量消費社会の一方で、手のかかった一点ものを求める方が増えていて、イナワラ細工も関心を集めています。

 面白いのは世代によって反応が違うことで、ご年配の方には懐かしいといわれるものが、若い世代には新しい、カワイイものと受け取られるのです。まだまだイナワラ細工には可能性があると感じる瞬間です。

つる細工の技法をアレンジ

下準備として、イナワラを稈と葉鞘に分ける

 イナワラ細工のクラフトはホームページで販売もしています。また、製作体験ワークショップも開催していて、人気なのがオーナメント(飾り)作りです。今回紹介する光のオーナメントは、つる細工の技法をアレンジした私のオリジナル作品です。

 材料のイナワラは下準備として、各節のすぐ上にハサミを入れ、稈と葉鞘に分けておきます。オーナメント作りでは稈を使います。加工しやすいように60~70℃のお湯に1分ほど浸し、取り出して水気を軽く拭き取り、半日ほど置いて触ってしっとりする程度になじんだら準備完了です。

 ぜひ、みなさんもイナワラを暮らしに取り入れてみてはいかがでしょうか。小さなところからで構いません。まずは今年のクリスマスオーナメントから。

筆者
筆者(42歳)。民俗研究家の結城登美雄さんの「ないモノねだりからあるモノ探しへ」という言葉をヒントに地域に宝があることに気づき、その継承に取り組み始める

*月刊『現代農業』2017年12月号(原題:イナワラでツリーに飾るオーナメントを作ろう)より。情報は掲載時のものです。

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