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【ミツバチのダニ対策】雄バチ巣房専用巣礎枠でダニを減らす

東京・高橋和子

ミツロウでなじませる

 プラスチックでできた雄バチ巣房専用巣礎枠(以下、雄バチ枠)は、雄バチ巣房(働きバチ巣房より少し大きい)に合わせて六角形が型押しされた巣板です。巣箱に入れると、すべて雄バチ巣房が作られます。巣房に蓋がかけられたら取り出して、ダニごと蜂児(蛹)を処分します。

 材質がプラスチックなので、私は最初に使う時、自家製のミツロウを溶かして巣板全体に薄く塗ります。何らかのコーティングはされているようですが、こうすることでミツバチが受け入れてくれやすくなるようです。

プラスチック製の雄バチ巣房専用巣礎枠(未使用)。巣板と巣枠が一体のタイプ。養蜂器具販売店で1枚700〜800円程度で販売
(写真はすべて編集部)

巣盛りと産卵時は真ん中寄り

 女王バチは保温に適したコロニーの真ん中あたりから産卵を始めますので、巣盛り(巣房作り)と産卵を促したい時は、巣箱の真ん中寄り、端から3〜5枚目あたりに入れます。

 巣を盛り上げるにはたくさんの蜜が必要ですので、花がたくさん咲き、ミツバチに勢いのある時期が適しています。例えば春先、単箱で越冬した群の女王バチが産卵を始め、どんどんハチの数が増えてくる時に雄バチ枠を入れるとすぐに盛り上げてくれます。

 もし1週間たっても盛り上げる気配がない時は、時期が違っているか、蜜がまったくないか、群が弱体化しているか、女王バチがいないかなど、他の原因を考える必要があります。

写真右:雄巣枠(緑)を巣箱の真ん中寄りに挿入(3月初め撮影。給餌枠は春以降は片側のみ入れる)
写真左:雄バチ巣房が作られ産卵し始めたことを確認後、雄巣枠を端寄りに移動(3月上旬撮影)

産卵後は端っこ寄りへ移動

 雄バチ枠の両面半分くらいに産卵が見られたら、通常の群内での雄バチの居場所、端から2枚目あたりに移動させ、蓋がされるまで置いておきます。私はどんな時期でも両端にはミツバチたちの食料として蜜枠を置いており、端から2枚目とはその内側、蜂児圏の一番端っこという意味です。

水洗いしても巣房は壊れない

 母ダニは蓋がされる直前に巣房に入り込みますので、雄バチ巣房に蓋がされたら掃除します。

 雄バチ枠の説明書には、枠ごと冷凍させてダニを殺す方法がありますが、巣枠が入る大きさの冷凍庫を持っていない養蜂家も多いと思います。

 私は枠を取り出し、蓋を切って新聞紙などの上で蜂児を落とします。ダニがいれば目視で確認できます。落としきれなかった蜂児はホースの水で洗い流して再利用します。特別強力な水圧でない限り、ミツロウで作られた巣房が壊れることはありません。

 また、よい群の雄バチを切り続けると、次世代育成用の雄バチが足りなくなるので、養蜂計画に沿って行なうことも大切です。

(東京都世田谷区)

ホースの水で残りの蜂児をさっと洗い出す。水を巣板に垂直に当てるほうが巣房が壊れない(3月下旬撮影)
蜂児とダニ(丸囲み)

記事といっしょに 編集部取材ビデオ


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