『現代農業』2025年11月号の巻頭特集は、「やっぱり最高!米ヌカを田畑に」。米ヌカは肥料になるし、病害虫防除や除草にも使える、農家にとっては馴染みの万能資材です。切り花農家がハウスの通路に米ヌカをふってみたら、殺菌剤なしでも灰色かび病もうどんこ病もほぼゼロになったという驚きの報告。試し読みとして公開します。
執筆者:大森茂利さん(岡山県瀬戸内市)
『現代農業』2025年11月号 「切り花ハウスで米ヌカ散布 灰色かび病もうどんこ病もほぼゼロに」より
スターチスで灰色かびが激発
「20年以上前、その頃育ててたスターチスのハウスで灰色かびがひどく蔓延してね。スターチスをやめちまおうかと思ったこともあるんだ」
思い出したくもないといったふうに、大森茂利さんは振り返る。当時からできるだけ花に農薬を使いたくなかった大森さんは、毎日のように被害株を抜き取っては改植する、の繰り返し。ダクトにバチルス菌資材を流して防除もしたが、散布ムラがあったのか効果はイマイチだった。
終わりの見えない灰色かび防除に限界を感じていた頃、たまたま書店で立ち読みした『現代農業』に「米ヌカ防除」が載っていた。トマト農家やキュウリ農家が通路に米ヌカをまいて、灰色かびを克服したという内容だ。ちょっとでも効果があればと、記事の真似をしたら、灰色かびがピタッと出なくなった。「これはいい!」と、以来すべてのハウス切り花で米ヌカ防除を続けている。
米ヌカ防除
通路や作物に米ヌカをふって病害虫を防除すること。コウジカビなどのカビを殖やすために散布するので、少量でいい。農薬と違い、天気を気にせず湿度が高いときでも使えて、耐性菌がつく心配もない。
米ヌカで病気が減るしくみはまだよくわかっていないが、米ヌカに生えたカビの胞子が空中を舞って作物に付着することで、病原菌のすみかを先取りしたり、抗菌物質を出したりして病気を抑えていると考えられている。
米ヌカを薄く通路にまく
大森さんは、9月にトルコギキョウやブプレウラムを定植したら芽の整理をする頃から5月の採花終了まで通路に月2回ほど手で米ヌカをまく。散布後数日で、米ヌカをエサに菌が殖え、ふわふわとした白いカビが表面を覆う。このカビが米ヌカ防除に欠かせないのだ。
このとき大事なのは、薄くまくこと。「地面がうっすら白くなるくらいがちょうどいい」。厚くまくと土の水分を米ヌカが吸い上げてカビが生えやすい湿度になるまで時間がかかってしまうという。
カビのようすを観察し、表面の菌糸に元気がなくなっていたりしたら、また通路全体へ米ヌカを散布。これを採花が終わるまで繰り返す。
ハウス内では温度や湿度の影響でカビが生えにくい部分もあるが、大森さんは気にしない。
「通路全面じゃなくてもいいんだ。常にどこかに白いカビがあって、その菌がハウス内を飛んでさえいれば」
米ヌカ防除は、米ヌカで殖えた菌が灰色かび病菌の場所を奪ったり、病気の菌が殖えにくい環境をつくったりすることで病気を抑えていると考えられている。宙にいる菌は目に見えないので、大森さんは米ヌカに生えたカビを目安にしているのだ。
灰色かびの農薬防除がゼロに
米ヌカ防除を始めて以来、灰色かびが激減。以前のように頭を抱えることもなくなった。殺菌剤も使っていないので発生をゼロにはできないが、病気が発生した株をハウス外に持ち出せば問題ない。トルコギキョウやブプレウラムなどでも手ごたえを感じ、うどんこ病も減ったと実感している。
また、定植前の8月には土づくりとして300㎡のハウスに30kgの米袋1袋分の米ヌカと約300kgの堆肥を入れて、耕耘・ウネ立て。約2週間ハウスを閉め込めば、高温で雑草のタネが枯死する。これをやるようになって、生育初期の雑草抑制のために張っていたマルチが不要になった。有機物を入れることで菌相が豊かになり、いい菌が病原菌を抑えてくれるのか、土壌消毒なしで20年以上連作できている。米ヌカは大森さんの花づくりに欠かせない。
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