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あああ

庭先や畑で、収穫されずに放ったらかしになっているカキが、とっておきの万能調味料に大変身!柿を余すことなく味わう、シンプルだけど奥深い柿酢づくりの知恵。

左が完成してすぐの柿酢、右は2年間熟成させたもの

執筆者:近藤宏行(広島県東広島市

『現代農業』2025年9月号 「余ったカキで 柿酢、私の作り方」より

 ある年のこと。甘柿が豊作でたくさん収穫できたけど、とても自分たちでは食べきれない量……。そんなときに知ったのが、カキのみを使ったシンプルな柿酢づくりでした。熟したカキをビンに入れて放っておけば、野生の酵母菌が働き、自然とお酢に変わってくれます。

 とはいえ、うまく酢酸発酵させるには、いくつかのポイントがあります。失敗談を交えながら、私なりの柿酢づくりを紹介したいと思います。

筆者(44歳)。自然養鶏を柱に、野菜や米を無農薬栽培し農的な自給ライフをおくる
筆者(44歳)。自然養鶏を柱に、野菜や米を無農薬栽培し農的な自給ライフをおくる

仕込み

熟したらビンに入れる

 10月ごろ、カキの実が赤く色づいたら収穫。カキの色が濃くなって軟らかくなるまで保管し、熟したら仕込みを開始します。まず、カキを軽く水洗いします。皮に付いた野生の酵母菌が落ちてしまうので、洗わない派もいるようですが、私は軽く洗っています。のちのち口に入れるものなので、埃や汚れなどは落として綺麗にしたいと思います。軽く洗う程度なら、問題なく酢酸発酵してお酢になります。

 洗ったカキはザルに上げて水を切り、キッチンペーパーなどで水気をふき取ります。ヘタの部分や変色した部分を包丁でえぐって取り除き、ビンに詰め込みます。皮に酵母菌が潜んでいるので、剥かずに丸ごと入れます。木べらで押しつぶしながら、カキが一体となるように全体を混ぜます。こうすることで空気に触れる面積が減り、カビるリスクが少なくなります。

カキの量はビンの 7~8分目まで 熟したカキをビンに詰めて木べらで潰した
熟したカキをビンに詰めて木べらで潰した。カキの量はビンの7~8分目まで

発酵

カキの量はビンの7分目程度

 酢酸発酵する際に酸素が必要になるので、空気を通す新聞紙やさらしなどでフタをして、ビンの口を輪ゴムで留めます。隙間があるとショウジョウバエなどが侵入して繁殖し、ひどいことになります。経験者は語る……。

 もう一つの注意点は、ビンいっぱいにカキを詰め込まないことです。発酵が始まるとブクブクと膨らんで表面が盛り上がるので、たくさん入れるとビンの口からあふれてきます。無理せず、7~8割くらいにしておきましょう。

 すべてのカキが同時に熟すわけではありません。わが家では熟れたものからビンに少しずつ足して、8Lのビンを使って数年おきに3ビンほど柿酢を仕込んでいます。

酢酸発酵中のビン。時間が経つとカキ(固体)と液体の2層に分かれる
酢酸発酵中のビン。時間が経つとカキ(固体)と液体の2層に分かれる
ビンにカキを入れ過ぎて、発酵時に溢れそうなときの写真。このまま放置すると溢れる
ビンにカキを入れ過ぎて、発酵時に溢れそうなときの写真。このまま放置すると溢れる

白い膜ができたら冷暗所へ移動

 まず、比較的暖かい室内に置いて発酵を促します。1カ月くらいたって、表面に白い膜が張って酢酸発酵が進んできたら、カビのリスクも減ってくるので、長期保管しやすい冷暗所に移して熟成を進めます。この膜は、お酢づくりの過程のはじめに出る「酢酸膜」で、徐々に酸っぱい香りもしてきます。

 お酢になってくると、いつの間にか酢酸膜が見えなくなりコンニャク菌と呼ばれるブヨブヨとした白い塊が表面に発生します。コンニャク菌は酢酸を消費するといわれていますが、私は気にせずお酢ができてきた証拠だと大目に見ています(笑)。

仕込んでから約40日後。表面にコンニャク菌ができてきた
仕込んでから約40日後。表面にコンニャク菌ができてきた

濾過・保存

空気に触れさせない

 わが家の場合、秋に柿酢を仕込んだら、春前までに濾し始めることが多い。長く置くと、コンニャク菌に酢酸(お酢)を消費されるだろうし、暖かくなると虫の侵入も心配だからです。

 まずは、ザルで大ざっぱに濾します。ある程度水分が落ちたら、お皿を載せて重石をかけると、より搾れます。次にさらしで濾します。保存するビンは口の細いものを使い、空気に触れる部分を少なくするためにビンいっぱいに入れ、フタをきっちり閉めます。というのも、空気に触れると、酢酸発酵が進んでコンニャク菌が成長し続けてしまうからです。前に一度、ネズミにビンのフタをかじられて知らない間に穴があき、コンニャク菌が大量発生してビンの口に筒状に連なり、大変なことになっていました。

左が完成してすぐの柿酢、右は2年間熟成させたもの
左が完成してすぐの柿酢、右は2年間熟成させたもの

 まれに保存している間も発酵が続いて炭酸ガスが発生し、フタが膨らんでくることがあります。それに気が付かなくて、ビンを破裂させた経験も。ガスが溜まると柿酢も炭酸っぽくなるので、フタをさらしに替えて空気に触れさせれば、自然とお酢に戻ります。そうしたら、またフタをして保存します。

酢酸発酵中のビン。時間が経つとカキ(固体)と液体の2層に分かれる
酢酸発酵中のビン。時間が経つとカキ(固体)と液体の2層に分かれる

活用方法

和え物にもピッタリ

 できた柿酢は、冷暗所で保管して熟成させます。私は火入れしませんが、問題なく長期保存できています。すぐに使うこともできるし、時間が経てば熟成が進んでだんだん色が濃くなって、味がまろやかになり変化を楽しむこともできます。
 柿酢は優しい酸味でほんのり甘く、とても使いやすいお酢です。酸味がマイルドなので、和え物などにも相性がよい。手前味噌ならぬ、手前お酢。自分で手間暇かけて作った柿酢は、本当においしいです。

『現代農業』2023年11月号には、以下の記事が収録されています。

今年も愉しい柿暮らし

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現代農業 2025年9月号

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定価
1,100円 (税込)