倒れたイネをむりやり刈ると、コンバイン故障の原因となります。やむを得ず倒伏したイネを刈る場合、どのような点に注意すればよいのでしょうか?
執筆者:荒木良介(滋賀県近江八幡市)
『現代農業』2025年9月号 「農機屋直伝 倒伏田で詰まらせないコンバイン設定と操作のコツ」より
倒さないのが一番だが......
滋賀県近江八幡市で農機具店を営んでおり、YouTubeチャンネル「荒木農機」でも、農機具の整備や使い方の情報を発信しています。
まず初めに、倒伏はさせないことが一番です。倒れたイネをむりやり刈ると、コンバインに負担がかかって大変故障しやすくなります。肥料を減らしたり丈の短い品種を作付けしたりと、倒さない努力をしていただきたいと思います。
それでも台風や大雨で、倒伏を避けきれない場合があります。ここでは、そうした際のコンバイン設定や操作方法をお伝えします。
操作の工夫
▼追い刈り
倒れたイネの株元側から穂先側に向かって刈り進める方法です。穂が引っかかりにくく、刈り取り部の詰まりも軽減されます。逆に、穂先から刈る「向かい刈り」は、バラバラした穂が先に刈り取り部に巻き込まれるので詰まりやすく、非常に危険です。絶対にしてはいけません。
▼刈り取り条数を減らす
詰まりやすいときは、刈り取り条数を1条減らすだけでも効果的です。イネの流入量が減り、機械への負担が減ります。
▼無理をしない
イネ刈り作業中に詰まりそうかな?と思ったら、すぐにエンジンを停止して刈り取り部のワラを手で取り除いてください。そのまま強行すると、完全に詰まって復旧に多大な時間と労力がかかってしまいます。詰まりかけの状態なら、ワラは簡単に取れるので、急がば回れの精神でお願いします。
設定の工夫
各機種により細かい差はありますが、共通する基本設定は以下の通りです。
刈り取り部で詰まらせない
▼自動車速制御:切
使っている機械に車速制御(自動で走行スピードを増減する装置)がついている場合は、必ず「切」にしてください。「入」状態だと、走行スピードがコンバインの選別部にあるモミの量で決まり、少ないと速くなり多いと遅くなります。倒伏田では刈り取りに時間がかかりモミの量がたまらないので、車速が上がって詰まりやすくなってしまうのです。
▼副変速:低速or倒伏
さらに副変速を「低速」か「倒伏」にして、コンバインの車速を落とします。刈り取り部に入ってくるイネの量が減り、引き起こしに時間がかかっても詰まりにくくなります。これは、ほとんどの方が試しているかもしれません。
▼刈り高さ制御:切
制御を入れていると地面までいくらかスペースが残るため、べったり倒れているイネでは刈り残しが出る場合があります。倒伏したイネの高さに合わせて刈れるよう、制御を切って手動にし、できるだけ地面ギリギリの高さになるようにしてください。
▼刈り取り変速:高速
刈り刃や引き起こし爪の動きを速くすることで、倒れているイネを持ち上げやすくします。知らない方がけっこういるポイントです。ただし注意点として、機種によっては、高速にすると引き起こしチェーンがイネを株ごと引き抜いてしまいます。そのような症状が出る場合は標準(中速)に戻すなど、調整してください。
刈り取り部の仕組み
脱穀部で詰まらせない
▼こぎ深さ:手動で最浅
倒伏している場合、刈り取り部を地面ギリギリまで下げるのでワラが長くなります。しかし、こぎ深さを自動制御にすると、センサーが反応するまでは初期状態の深こぎ(こぎ胴の奥までイネが入ること)になります。すると、長いワラがこぎ胴に巻き込まれたり、くの字になって入っていかなかったりして、脱穀部で詰まりやすくなります。手動にし、こぎ深さを最浅にします。自動を切ることに抵抗がある方は多いと思いますが、この設定はとくに重要です。
刈り取り部の仕組み
ただし、もち米や酒米など背丈の高い品種が倒伏すると、こぎ深さを最浅にしても深こぎ状態になります。コンバインでの刈り取りが困難になるので、こういった品種では倒伏にとくに注意してください。
補助デバイダも効果的
ここまでの設定をしても、倒伏時に刈り取り部分でどうしても詰まる場合があります。各メーカーでは、倒伏時の作業を補助する専用の引き起こしパーツ(補助デバイダ)をオプションで用意しています(クボタではスイスイデバイダ、ヤンマーではOKデバイダなど)。そういったものを活用することも、非常に有効だと思います。
ただし、倒伏していない状態で使用すると……
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