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【野良で生れたうた】俳句―入選作例と選者評

『現代農業』の「野良で生れたうた」では、読者から投稿いただいた詩・短歌・俳句を、それぞれの選者の先生方が毎月選評したうえで掲載しています。先生方に添削もしてもらえます。例として、冬の時期に掲載した俳句の一部を紹介します。皆さんの投稿を楽しみにお待ちしています。

板倉馨子 選

俳句

若水《わかみず》を両手に受けて鎌を研ぐ

(兵庫県明石市)小田 慶喜 『現代農業』2024年4月号より

選者評

若水は元日の朝初めて汲む水をいう。原句中七の「もらひ」を「受けて」とした。めでたく清らかな若水を両手に受けて鎌を研いだ。身の引き締まる瞬間である。今年も農事を始め、諸事が順調に運ぶようにとの願いがこめられている。

遠き日や昔話の炉に育ち

(岩手県岩手町)遠藤 初枝 『現代農業』2023年4月号より

選者評

子供の頃、祖父母が炉端でよく昔話をしてくれた。怖い話や楽しい話、身につまされる話、等々。炉を囲む季節になると、その情景が思い出される。話をしてくれた人達の面影も浮かんでくる。「昔話の炉に育ち」という言葉に万感の想いがこめられている。

古日記余白無きほど書き込めり

(鳥取県米子市)畑中 真理子 『現代農業』2023年3月号より

選者評

一年間丹念に書いてきた日記。読み返すと、余白がないほどいろいろ書き連ねていた。たぶん、大晦日のページは、びっしりと文字で埋まっていたのであろう。新しい日記を買い、古い日記を前にして感慨にふける作者。年の終わりの実感が一句となった。「余白無きほど」という中七にそれが表現されている。

かんじきの跡振り返る白き道

(兵庫県明石市)小田 慶喜 『現代農業』2023年5月号より

選者評

雪国で暮らす人の想いの深い句。原句の下五「白き里」を「白き道」とした。風景の焦点を絞ることで、かんじきの跡が見えてくる。さらに、「跡振り返る」という言葉には、人生の回顧という意味も込められている。「里」では景が広がりすぎるので「道」とした。

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