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【農薬のローテーション防除】RACコード先進国、日本!?(全文掲載)

同じ農薬を連用せず、ローテーションすることが、病害虫に抵抗性(耐性)をつけないための常識です。現代農業2023年6月号の小特集「RACコードでローテーション防除2023」のなかから、編集部イチオシの記事を試し読みとして無料公開します。

編集部

RACコード

RACコードとは・・・?

  数字とアルファベットを組み合わせた記号で、農薬を作用機作ごとに分類したもの。例えば殺虫剤なら有機リン系は[1B]、ネオニコチノイド系は[4A]など、すべての農薬に「IRAC《アイラック》コード」がある。同様に、殺菌剤には「FRAC《エフラック》コード」、除草剤には「HRAC《エイチラック》コード」がある。違うコードの殺虫剤を交互に使えば、害虫の抵抗性発達を遅らせることができる。ようは「系統」と同じなのだが、RACコードは、より厳密に分類された国際基準だ。近年、農薬のラベルに表記されるようになってきた。

世界中から熱視線

 今年3月、京都府でIRAC(殺虫剤抵抗性対策委員会)の国際会議が開かれた。57 回目にして初のアジア開催。農薬メーカーの研究者らが、世界中から参加したという。

 JIRACのリーダー(日本支部長)の島克弥さんによると、日本はいまや「RACコード先進国」。世界中から熱い視線を集めているらしい。

 『現代農業』がRACコードの特集を初めて組んだのが2015年6月号(「農薬のラベルに『系統』の表示が必要だ」)。当時、国内で農薬ラベルにRACコードを明記していたのはデュポン社(現在のコルテバ社)のみ。「病害虫防除指針」にRACコードを記載している県もごくわずかで、農家はもちろん、農協の指導員や普及員にも、その存在がほとんど知られていなかった。

 アメリカや韓国では、RACコードを農薬ラベルに記載する動きがすでにあると知り、とてもうらやましかった。

 本誌ではそれ以降、毎年6月号でRACコードをしつこく特集。RACコード別に農薬を分類した一覧表も作って、読者への普及に努めてきたつもりだ。

 その甲斐も多少はあったか、行政や農薬メーカーも動いた。16 年には農水省が、各農政局に宛てて「農薬名にはRACコードを併記せよ」と通達を出し、防除指針や防除暦等へ記載する都道府県が少しずつ増えてきた。

 そして17年には、農薬工業会がメーカー各社に対して「RACコードを農薬ラベルにも記載しましょう」と号令をかけた。これがじつに大きかった。

 翌18年には一部のメーカーがラベル記載を決め、19年6月号で行なったアンケートでは、主要23社のうち16社が記載し始めていた。20年には残り4社となり、22年には全メーカーが開始。とうとう、日本の農薬にもRACコードが記載されることになったのだ。

 ようやく、世界に追いついた。そう思っていたのだが、じつはいつの間にか、世界を追い越していたらしい。

国もメーカーもJAも 農家も

 資材屋さんに行くと、RACコードを記載していない剤もまだある。すべてのJAが防除暦に載せているわけでもない。それでも島さんによれば、日本のように国や都道府県、農家団体(全農やJA)、農薬工業会やメーカーが揃って、RACコード活用に前向きな国は他にないそうだ。国際会議では他国の研究者らに、どのように普及させたのか、秘訣を聞かれたという。

 ただ、喜ぶのはまだ早い。RACコードが普及したといえるのは、多くの農家が正しいローテーション防除を組んでこそのこと。抵抗性病害虫は依然として増え続けており、一方で、使える農薬は減っているのだ。

 「新農薬情報」は、6月号の定番コーナーである。大阪府の先生方に毎年お願いしているが、紹介できる新剤は年々減り、今年はとうとう殺虫剤、殺菌剤ともに1剤のみとなった。

 新規系統(新しいRACコード)の成分を見つけるのは容易じゃない。農薬取締法の一部改正により、作業者の安全性や環境、動植物に対する新たなリスク評価が導入され、再評価制度も始まって、新規登録や継続のハードルは非常に高くなっている。農家は今ある農薬を、いつまでもちゃんと効くように、大事に使い続ける必要がある。

 RACコードでローテーション防除、その普及のカギを握るのはJAである。

群馬県のJA佐波伊勢崎・あかぼり営農センターの資材店舗 (写真提供:JA佐波伊勢崎)
群馬県のJA佐波伊勢崎・あかぼり営農センターの資材店舗 (写真提供:JA佐波伊勢崎)
値札にRACコードや剤の特徴を記載している
値札にRACコードや剤の特徴を記載している

 上の写真2枚は群馬県のJA佐波伊勢崎、あかぼり営農センターの資材店舗。去年から、組合員の要望で、値札にRACコードや農薬の特徴を書き込むことにしたという。こうした取り組みが、農薬の寿命を延ばすはずだ。

現代農業WEBでは、アンケートに答えると、「RACコード一覧表」と農薬ボトルに貼るときに便利な「切って使おう! RACコードラベル」がダウンロードできます。ぜひご利用下さい。

2023年6月号では「RACコードでローテーション防除2023」と題して、以下の記事も掲載しています。ぜひ本誌でご覧ください。

  • 抵抗性ネギアザミウマ 別系統の有効薬剤でローテーション防除 窪田直也
  • 薬剤抵抗性病害虫の最新調査報告
  • 殺虫剤・殺菌剤のRACコードによる分類一覧
  • 除草剤のRACコードによる分類一覧
  • 新農薬情報 殺虫剤、殺菌剤 西岡輝美、金子修治

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今さら聞けない 農薬の話 きほんのき

農文協 編

農薬の成分から選び方、混ぜ方までQ&A方式でよくわかる。たとえば、農薬の「成分」って何のこと? 商品名は違うのに成分が同じ農薬は多い? ミニトマトはトマトと同じ農薬でいいの? といった「基本的なことだけど大事な話」が満載。さらに、RACコードって何? 混ぜると効き目がアップする農薬は? 多品目畑で使いやすい農薬は? といった現場の悩みにも応える。農薬の効かせ上手になって減農薬につながる一冊!