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ヤクルトで乳酸菌液培養、イネの苗立枯病が止まる

現代農業2023年6月号の巻頭特集は「虫には虫を菌には菌を」。この記事は、自家培養した乳酸菌液でイネの苗立枯病を止めている中道さん話です。乳酸菌液の作り方とつかい方がわかります。記事の一部のみ無料公開します。

滋賀・ 中道唯幸

乳酸菌10倍液の散布。中道農園の稲作面積は約40 ha 、うち33 ha は有機栽培や自然栽培(依田賢吾撮影、以下Yも)
乳酸菌10倍液の散布。中道農園の稲作面積は約40 ha 、うち33 ha は有機栽培や自然栽培

乳酸菌満杯で病気を抑える

 5年ほど前のことです。有機栽培のイネの育苗で葉っぱが針のように巻き始め、モミ枯細菌病、ピシウム菌などによる苗立枯病を大発生させてしまったんです。技術者に相談したら「ここまでひどいと化学薬品でも難しい」と言われたもんだから、目の前が真っ暗です。

 すがる思いで、いつもアドバイスをいただいている佐々木農業研究会の佐々木茂安さんに相談したところ、育苗床土の pH が6.5を超え高いのが原因なので、pHを下げ、これ以上病気が広がるのを抑えるために、苗には悪影響のない「乳酸菌で満杯にしておきましょう」と指導を受けたのです。

 当園では、有機水田の藻の発生を抑えるために、乳酸菌を自家培養して大量に使ってきました。そこで急遽、自家培養していた乳酸菌を苗全体にたっぷり散布。おかげで病気の進展を見事に止めることができたんです。

 効果は完璧です。乳酸菌など、作物に影響のない微生物に事前にすみ着いてもらえば、病原菌などが入り込みにくくなることが明確にわかったんです。

ヤクルト+牛乳、糖分

200Lのドラム缶に乳酸菌原液を20L(Y)
200Lのドラム缶に乳酸菌原液を20L(Y)

 準備する物は、フタのできる清潔な容器とゆっくり軽く撹拌できる装置、加温するためのヒーター、それに保温性もあるとよいでしょう。

 雑菌は失敗の原因なので、容器(培養タンク)内を隅々まで丁寧に洗浄します。次に家庭用のボイラーを使って40℃余りのお湯をタンクに注ぎながら、1000Lのタンクに対して黒砂糖なら15kg、糖蜜なら1缶24kgを投入してお湯に溶かす。さらに成分無調整の牛乳1Lを入れ、タンク内をお湯で満タンに。液温が40℃未満になっていることを確認のうえ、乳酸菌の種となるヤクルト(シロタ株)を。佐々木さんからは1本 65mlでいいと言われましたが、僕は念のため3本入れています。

 ここから先は36〜 38℃の温度管理が大切なので、デジタル温度計のセンサーを液に沈めて監視。乳酸菌は嫌気性のため酸素を好まないので、できるだけ密閉した状態にしておく。

 5〜6日くらいたって pHが3.8を切れば完成。ヒーターも攪拌機もオフにします。

 pHが3.5近くなると、エサの糖分を食べ尽くした状態です。できるだけ涼しい場所で3週間くらいなら保管できます。それ以上保管する場合は、糖を加えて乳酸菌のエサを補充するとよいでしょう。

 連続して培養するときは、容器液量の1割を種菌として残しておき、糖と牛乳を初回と同量投入すると、容器の洗浄の必要もなく培養期間も2〜3日と大幅に短縮できます。

乳酸菌液の使用方法

乳酸菌培養

 乳酸菌液は、水稲育苗期間中に次のように使っています。まずは……

詳しくは2023年6月号をご覧ください

2023年6月号「菌には菌を」コーナーでは、この他にも以下の記事も掲載しています。ぜひ本誌でご覧ください。

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  • イチゴのうどんこ病、灰色かび病に米発酵液が最強! 長谷川泰幸
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農文協 編

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