現代農業WEB

令和6(2024)年
4月20日 (土)
卯月
 友引 甲 寅
旧3月12日

あああ

ホーム » 連載記事一覧 » 果菜の作業コツのコツ » 祝! 単行本化【果菜の作業コツのコツ 】Vo.13 「よい苗」はポットとセルではちがう

祝! 単行本化【果菜の作業コツのコツ 】Vo.13 「よい苗」はポットとセルではちがう

現代農業に2004年から14回にわたり連載した「果菜の作業コツのコツ」を週1回(全14回)期間限定でお届けします。キュウリの大産地、宮崎県の研究者だった著者の経験と観察、農家との付き合いの中でつかんだ果菜つくりの極意満載、目からウロコです。*本連載は再編・加筆され、2023年2月に単行本化されています。

元宮崎県総合農業試験場・白木己歳

セルトレー
セル苗をつくるためのセルトレイ(編集部)

定植後の草姿づくりは最初のもっとも重要な関門

 今回は、ポット苗とセル苗とでは、よい苗の基準が異なるという話。育苗と定植後の管理をつなぐ話である。

 まず、ポット苗からみてみよう。定植した後の草姿づくりの場面から考えると、よい苗の姿がみえてくる。

 果菜は茎葉が大きければいいというものではない。限られた面積に一定数の株を植え込む都合や、果実の生長とのバランスをとる必要などから、ほどよい大きさというものがある。そういう草姿にもっていく管理、すなわち草姿づくりは、果菜栽培にいくつかある関門の中で、もっとも初期に位置する、もっとも重要な関門である。

 草姿づくりは、果実の負担が株にまだかかっていない時期に行なう。株が旺盛な生育に向かう状態にあるこの時期に手を打たないと大きな茎葉になってしまう。そこで、草姿づくりはふつう、水かけを制限することで生育を抑える方向の管理が行なわれる。

ポット苗は、水を控えて充実した苗に

 草姿づくりは定植後の管理ではあるが、苗のときにその下準備を終えておくとずいぶんラクをするし、目標の草姿に近づきやすい。育苗中に水のかかりすぎていない苗は充実した茎葉をしているため、しおれにくく、定植後の水かけの制限がやりやすいのである。

 逆に育苗段階で水をかけすぎて徒長させてしまった苗は、定植後に水かけの制限をすると、強度のしおれを起こす。そのため、水をちょこちょこやらねばならず、生育を抑えるのがむずかしい。しかも、それらの水はウネ内にしっかり残り、後日生育に弾みがついて理想の草姿からますます遠のいてしまう。

 したがって、水のかかりすぎていない充実した苗がよいポット苗ということになる。そういう苗は、一回の水量を少なくするのではなく、かけるときにはしっかりかけて、次の水かけを土が白く乾き始める頃まで待つという方法で作ることができる。ただし、そういう水かけは、大部分は乾いてもどこかに水を保持できる性質をもつ用土でないとうまくいかない。技術の裾野は結構広いのである。

ポット床土の土粒は不均一がいい――水の制限が可能
ポット床土の土粒は不均一がいい――水の制限が可能

セル苗は水を控えず、みずみずしい苗に

 いっぽうセル苗は、水かけを制限することはできない。粒の小さい均一な用土を使ううえに一容器中の土量が少ないため、乾かすと根圏のどこもここも均一に乾いてしまうのである。それに、初期のしおれから短時間で強度のしおれにいたる。苗の時の強度のしおれは、定植後まで長く尾を引き減収を招く。セル育苗では、常に一定以上の湿りを保持させておくことが大切なのである。

 つまり、よいセル苗とは、乾燥に一度も遭遇したことのないみずみずしい苗である。セル苗の水の制限は、二次育苗のためポットに上げた後、あるいは圃場に直接定植した後ということになる。

苗の種類と水かけ
苗の種類と水かけ
育苗中の水管理と定植後の草姿づくり
育苗中の水管理と定植後の草姿づくり

*月刊『現代農業』2005 年5月号(原題:「よい苗」はポットとセルではちがう)より。情報は掲載時のものです。

農業情報サイト「ルーラル電子図書館」個人会員の方は、全話を【閲覧期限無し】でお読みいただけます。

★お申込みは田舎の本屋さんより受付中!

期間限定で、お得な「現代農業」セットプランを販売中!

 ★いきなり申し込まずにまずは試したい…という方は、「ルーラル電子図書館 無料お試し版」がオススメ!

利用開始より期間は3日間、30ページ(30ポイント)まで無料でご覧いただけます。契約の自動更新はありません。

\\詳しいご説明はコチラ//

\新刊情報/

深掘り 野菜づくり読本

白木己歳 著
定価1,870円 (税込)
ISBNコード:9784540211034

土壌消毒は根に勢いをつけるため、水を控えたければ土を鎮圧すべし、元肥には残肥を使うなど、ベテランほどよく間違う「思い込みのワナ」を解きほぐし、作業の意味を深掘り。技術の本質を見抜き、「栽培力」を磨く。

著者

白木己歳(しらきみとし) 1953年宮崎県生まれ、宮崎県総合農業試験場などに勤務したのち2012年に退職。現在は菱東肥料㈱顧問のかたわら、シラキ農業技術研究所を主宰。国内外(ベトナム、台湾など)で技術指導を行なっている。著書に、『トマトの作業便利帳』『写真・図解 果菜の苗つくり』『キュウリの作業便利帳』、『果菜類のセル苗を使いこなす』、『ハウスの新しい太陽熱処理法』いずれも農文協刊。