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【置くだけ定植】ミニトマト 手抜きして植えたのに、こんなにとれるとは!

現代農業2023年4月号の巻頭特集「浅植え&置くだけ定植」コーナーのなかから、編集部イチオシの記事の一部を試し読みとして公開します。ぜひご覧ください。

熊本・ 宮本 元

「置くだけ定植」のミニトマトと筆者( 写真はすべて依田賢吾撮影)
「置くだけ定植」のミニトマトと筆者( 写真はすべて依田賢吾撮影)

植え穴をあけるのが大変

 初めまして。熊本県でミニトマトを栽培している宮本元といいます。ハウスでの土耕栽培で、面積は 61 aです。
「置くだけ定植」を考えるようになったのは、「浅植え」の概念を知ってからです。亡くなった父は苗を植えるとき、根鉢の4分の3程度しか埋めていませんでしたが、なぜそうしているか、具体的な効果や根拠もないまま受け継ぎました。
 脱サラして初めての定植で感じたのは、「穴あけ大変だな……」。浅植えでも、思っていた以上に面倒で、重労働でした。
 いきなり全面積で置くだけ、なんてリスキーなことはできないので、まずは空いているウネで実験。2020年3月、ホームセンターで買った5本の苗で試してみると、案外枯れもせず順調に育つので、僕自身はもちろん、半信半疑だったパートさんも一緒になって、皆で驚きました。「少ない本数だから管理できたんだろ?」と皆からの疑念もありましたが、5月には収穫でき、一応の結果は出せました。

定植時間が格段に短縮、 大玉率アップ

2022年12月下旬(9月上旬定植)。「千果」を斜め誘引で栽培。ダブル果房が多く、大玉が連なっている(左)。株の上部。花が規則正しく咲いている(右)
2022年12月下旬(9月上旬定植)。「千果」を斜め誘引で栽培。ダブル果房が多く、大玉が連なっている(左)。株の上部。花が規則正しく咲いている(右)

 翌年は20aまで実験面積を増やし、本来の作型通り8月下旬から定植。その際、パートさんとこんなやりとりがありました。
「ほんとに置くだけ?」
「はい、そうです」
「穴は?」
「一切掘りません。あくまで置くだけです」
 不安に思う人もいて、再三確認されましたが、「大丈夫です」と説明しました。
 苗の接地面はなるたけ隙間がないようにしたいので、ウネの置く場所を手で平らにします。あとは窪ませたりせず、ポンッと置くだけ。1mmも掘りません。少しでも穴を掘ったら「置くだけ」とはいえない。そう考えています。
 20aでの実験でしたが、通常の穴あけ定植と比べて、作業時間を格段に短縮できました。パートさんが6人いて、1人あたり1日2時間ほど削減することに成功。
 収穫開始は10月下旬からで、初めは大きめの2Lサイズが9割でした。1月頃からはLM中心、3月頃からはMS中心。最後まで安定してとれ、収穫量も落ちませんでした。肌感ではありますが、最小の2Sはいつもより少なく、1割ほどです。秀品率はおよそ8割と高く、傷や割れも減りました。
 22年8月から、全面積を置くだけ定植にしています。

病気も生理障害も出にくい

太い根がむき出しになり、緑化。病気に負けないのも、このたくましい根のおかげ!?
太い根がむき出しになり、緑化。病気に負けないのも、このたくましい根のおかげ!?

 以前は定植後の高温により、10〜11月に生理障害が発生し、花が咲き乱れてカスミソウのようになることもありました。置くだけ定植の影響か否か不明ですが、生理障害は圧倒的に減少。栽培中、気にかかることもなくなりました。
 置くだけ定植をすると、どういうわけか、病気にも強くなるようです。青枯病の予防対策の一つとして効果が大きいと感じており、去年8月に定植した分は、年内の被害が数十本とかなり低いです。その他の根幹系の病気も今の時点(23年1月)で未確認です。

根の乾燥を防ぐ

片手で引っ張ってもビクともしない。株を片づけるときは、両手で力を込めないと抜けない
片手で引っ張ってもビクともしない。株を片づけるときは、両手で力を込めないと抜けない

 個人的には、置くだけ定植にデメリットは感じていません。考えられる欠点は、定植時の根っこの乾燥による根傷みや株枯れ。これは想定内で、対応できたので問題ありませんでした。
 根の乾燥を予防するため、定植の3日ほど前から……

詳しくは2023年4月号をご覧ください

2023年4月号の特集「浅植え&置くだけ定植」コーナーでは、この他にも「究極の浅植え 置くだけ定植」と題して、以下の記事も掲載しています。ぜひ本誌でご覧ください。

  • 大玉トマト 定植がスピードアップ、土壌病害まで減った(熊本・宮崎章宏さん)
  • 経費も手間もかけない キュウリのポットごと置くだけ定植 山口仁司
  • 置くだけ定植&不耕起でイチゴの初期生育が大改善 秋澤孝至
  • 葉物を売りたい数だけ リングごと置くだけ定植 佐村栄
  • まんまるラディッシュができる セルトレイ直置き定植 嶋田幸洋
  • 置くだけ定植の三つのメリット━━なぜ病気に強くなる? 白木己歳

トマト大事典

農文協 著

栽培の基礎から最新研究、全国のトップ農家による栽培事例まで収録した国内最大級の実践的技術書。カラー口絵16頁、索引付き。話題の「環境制御技術」や養液栽培も収録。大玉、中玉、ミニ、加工用トマトを網羅。

最新 夏秋トマト・ミニトマト栽培マニュアル

後藤敏美 著

 『新版夏秋トマト栽培マニュアル』から6年ぶりの改訂版。課題の気候変動への対応を踏まえ栽培管理を1から見直すとともに、茎葉・果実の各種障害、病害虫対策などを充実、さらに高温対策や簡易雨除け栽培の章やミニトマト栽培のコーナーも新しく増補した。  また、横長スマホサイズのフレームに1項目を納め、そこに写真や図とともに簡潔な解説を入れて構成するスタイルを採用(1ページで3項目収録)。写真、解説をスマホに納め、現地でも使える本に。